本稿は公開時点で確認できた報道・資料をもとに編集しています。内容の正確性には十分配慮しておりますが、その後の続報や公式発表により情報が更新される可能性があります。ご参照の際は、必ず最新の公式情報も合わせてご確認ください。
生成AI悪用事例とセキュリティ対策
AI初心者でも分かる!最新のサイバー脅威と対策方法
日本初!AI技術を悪用したランサムウェア作成で逮捕
事件の概要
2024年5月27日、日本で初めて生成AIを悪用してマルウェア(悪意のあるソフトウェア)を作成した男性が逮捕されました。この男性はランサムウェアと呼ばれる身代金要求型のウイルスを作成していました。
重要ポイント:この容疑者はIT企業での勤務経験がないにも関わらず、AI技術を使ってコンピューターウイルスを作成できてしまいました。
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画像引用:トレンドマイクロ公式サイト
ランサムウェアとは?
パソコンのファイルを暗号化して使えなくし、元に戻すために金銭を要求する悪意のあるソフトウェアです。企業や個人のデータを人質に取る「デジタル誘拐」のようなものです。
生成AIとは?
ChatGPTのように、人間との対話を通じて文章やコード、画像などを自動生成できる人工知能技術です。本来は便利なツールですが、悪用される危険性もあります。
AI技術悪用の歴史を振り返る
今回の事件以前にも、AI技術を悪用した事例は数多く発生しています。時系列で主要な事例を見てみましょう。

画像引用:トレンドマイクロ公式サイト
2021年2月:災害時の偽情報拡散
福島県・宮城県の地震発生時に、官房長官の記者会見画像が改ざんされてSNSで拡散されました。
2022年3月:戦争における情報戦
ウクライナのゼレンスキー大統領の偽動画が作成され、兵士に降伏を呼びかける内容で拡散されました。
2023年5月:経済への影響
米国防総省で爆発が起きたという偽画像により、ニューヨーク株式市場が一時的に急落しました。
AIを悪用するための「抜け穴」とは?
通常、ChatGPTなどの正規のAIサービスは、悪意のある用途での使用を防ぐための安全対策が施されています。しかし、犯罪者たちはこれらの対策を回避する方法を見つけています。
悪用専用AI「WormGPT」の販売広告
正規のChatGPTが不正リクエストを拒否する様子
画像引用:トレンドマイクロ公式サイト
悪用手法「ジェイルブレイク」とは?
犯罪者たちは、AIの安全機能を回避するために「ジェイルブレイク」と呼ばれる手法を使います。これは、AIに対して巧妙な言い回しで指示することで、本来なら拒否されるはずの悪意のあるリクエストを実行させる方法です。
主なジェイルブレイク手法:
- ロールプレイング:「セキュリティ専門家として」「研究目的で」など、legitimate(正当)な立場を装う
- 仮定的表現:「もし〜が許可されているとしたら」といった仮定の質問形式を使う
- 多言語利用:英語以外の言語でリクエストして検閲を回避する
- 段階的アプローチ:最終目的を隠して、部分的な情報を収集していく
今回の事件での手法
報道によると、今回逮捕された容疑者も、最終的な目的(ランサムウェア作成)を隠して、段階的にファイル暗号化や身代金要求に必要な技術情報をAIから取得していたと考えられています。
今後予想される3つの脅威
AI技術の発展に伴い、サイバー犯罪の手口もより巧妙化・効率化していく可能性があります。主な懸念事項を3つのカテゴリーに分けて解説します。
1. サイバー攻撃の巧妙化
AI技術がサイバー攻撃に直接組み込まれることで、より高度な攻撃が可能になります。
具体例:Morris II(モリスツー)
AI技術を使って、自分自身を複製・拡散できる自立型ハッキングツールの開発が可能になっています。これは1988年に初めて大規模な被害をもたらしたコンピューターワーム「Morris worm」のAI版として注目されています。
2. サイバー攻撃の効率化
これまで時間のかかっていた攻撃準備が自動化され、攻撃の頻度と精度が向上します。
効率化される作業
- システムの脆弱性発見
- 攻撃対象の選定と分析
- 多言語でのフィッシングメール作成
- ソーシャルエンジニアリング攻撃の個人化
3. サイバー犯罪への参入障壁の低下
専門的なIT知識を持たない人でも、AI技術を使って簡単にサイバー攻撃を実行できるようになります。
現在の状況
既に「RaaS(Ransomware as a Service)」という、ランサムウェアをサービスとして提供する仕組みがダークウェブ上で販売されています。
今後はAI技術により、さらに低コストで簡単にサイバー攻撃用プログラムが作成できるようになる可能性があります。
AI時代のセキュリティ対策戦略
重要な視点転換
攻撃者がAI技術を悪用するなら、防御側もAI技術を活用して対抗する必要があります。これは「AI vs AI」の時代の到来を意味します。
AIによる防御技術の進化
-
自動脆弱性発見:攻撃者よりも先に自社システムの弱点を発見 -
リアルタイム監視:ログ情報を解析して不審な活動を即座に検出 -
自動対応:攻撃を検知した際の初期対応を自動実行 -
AIアシスタント:セキュリティ担当者の業務をサポート
ゼロトラストセキュリティ
「何も信頼しない、すべてを検証する」という考え方に基づくセキュリティフレームワークです。
基本原則:
- ネットワーク内外を問わず、全ての通信を検証
- 最小権限の原則(必要最小限のアクセス権のみ付与)
- 継続的な監視と評価
- 自動化された脅威対応
組織が今すぐ実施すべき対策
技術的対策
- CREM(サイバーリスク露出管理)の導入
- AI搭載セキュリティソリューションの活用
- 定期的な脆弱性診断
- 多層防御の構築
人的・組織的対策
- 従業員へのセキュリティ教育強化
- AI技術の適切な利用ガイドライン策定
- インシデント対応計画の見直し
- 定期的なセキュリティ訓練の実施
個人でもできるAI時代のセキュリティ対策
企業だけでなく、個人も AI技術の悪用による被害から身を守る必要があります。日常生活で実践できる対策をご紹介します。
情報の真偽確認
- • 複数の信頼できる情報源で確認
- • 画像や動画の違和感をチェック
- • 感情的な内容は一度冷静になる
- • 公式アカウントからの情報を優先
基本的なセキュリティ
- • 強固なパスワードの使用
- • 二段階認証の設定
- • ソフトウェアの定期更新
- • 怪しいリンクや添付ファイルを避ける
継続的な学習
- • 最新のサイバー脅威情報の収集
- • AI技術の基本的な理解
- • セキュリティ意識の向上
- • 疑問があれば専門家に相談
まとめ:AI時代のセキュリティの要点
重要なポイント
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AI技術の悪用は今回の事件が「始まり」であり、今後より巧妙化する可能性が高い -
攻撃者と防御者の両方がAI技術を活用する「AI vs AI」の時代に突入 -
従来のセキュリティ対策だけでは不十分で、AI技術を取り入れた防御が必要 -
個人の情報リテラシー向上も重要な防御策の一つ
今後の展望
AI技術は「諸刃の剣」です。適切に活用すれば、これまでにない強力なセキュリティ防御を構築できますが、悪用されれば深刻な脅威となります。
重要なのは、AI技術の発展を恐れるのではなく、その特性を理解し、適切な対策を講じることです。組織も個人も、継続的な学習と対策の更新が求められています。
「攻撃者が弱点を見つけるよりも早く、自社内でリスクに対処する」ことが、これからのセキュリティ対策の基本となります。
出典・参考資料
読売新聞:AI悪用マルウェア作成事件関連報道(2024年10月25日)
FBI Internet Crime Complaint Center:「Internet Crime Report 2023」
各種報道機関による関連ニュース記事
免責事項:この記事は公開情報に基づいて作成されており、技術的な詳細については専門機関の公式情報をご確認ください。セキュリティ対策の実装については、専門家にご相談することをお勧めします。
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